2008年7月11日金曜日
高野 和明 『幽霊人命救助隊』
3年以上前、文学評論家の北上次郎氏がラジオ番組で紹介していた本です。
北上次郎氏は目黒考二氏のペンネームの一つで、
目黒考二氏は「本の雑誌」の編集長をするぐらいの
無類の本好き、かつ、本の紹介好き。
椎名誠氏と友達で、群ようこ氏をデビューさせた人でもあります。
この人が紹介する本は、エンターテイメント性を高く保持しつつ、
それだけに終わらない魅力を持つものが多いです。
で、今日はこの本。
高野 和明著『幽霊人命救助隊』文春文庫 720円
目黒考二氏自身の紹介文がこのサイトにあります。
一部を紹介しますと・・・
★主人公は4人。大学受験に失敗した青年、30代の女性、中年の男性、そして60過ぎの暴力団組長。この4人は理由があって自殺してしまう。それぞれの事情はおいおい語られる。
★自殺した4人は、天国に行くかと思いきや、どこか野原のようなところで目が覚める。すると、上空からパラシュートで妙な白髪のじいさんが降りてくる。誰かと思えば、なんと神様。神様が言うことには、「おまえらは命を粗末にしたから、このままでは天国に行かせない。7週間あげるから、その間に自殺しようとしている100人の命を救いなさい。100人救ったらおまえら4人を天国に行かせてあげよう」と。かくして、4人は幽霊となって下界に降りて自殺志願者を救おうと奔走することになる。
★幽霊となった4人は、透明人間のように普通の人には見えない存在。ものに触れることも出来ない。では、どうやって人を救うのかというと、、、?神様から、いろいろなお助けグッズを与えられる。これがバカバカしい。例えば、耳元に声を届けるメガホン。自殺志願者を見分けるゴーグル。
★この小説が良くできているのは、自殺をしようとしている人間が抱えている苦悩や状況を根本的に取り除くのは無理だということを踏まえていること。すべて解決しようというのではなく、道筋だけをつけてあげる。例えば、会社で左遷され絶望し、自殺しようと思い詰めている男を救うには、どうしたらいいか。左遷という事実自体を変えることが出来ない以上、気持ちの持ちようを変えるしかない。そのために何が有効かと考える。設定は荒唐無稽だが、苦悩の中身と救い方の部分は実にリアル。
★しかも。全編にわたってユーモラス。自殺という深刻なテーマを真面目に扱いながら、ユーモアを忘れない。例えば、左遷された男がまさに自殺を図ろうとしている時、主人公の一人の暴力団の組長は、時間を稼ぐためにメガホンで「遺書を書け」と叫ぶ。さらに、「辞世の句を書け!」、「季語がない!」、、、、。
★自殺をしようとする人の苦悩は十人十色、100人それぞれの苦悩と主人公4人のドラマが重なっていく。この二重構造が効いている。
★金、家族、愛情、、、現世にあふれる沢山の苦悩の見本市のようだが、それがちょっとしたことで救われることが示される。奇想天外で、読めば元気が出てくる理想的な娯楽作品。
(少し、引用しすぎ?!)
私も注文しました。
コーチングで一隅を照らす(私のホームページです)
←応援ありがとうございます
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